寝ても覚めても夢の中

個人の妄想と偏見と現場からの記録

マニラで推しに無視された話

 201416年前半は、とにかくEXOがくらしとともにあったのでした。

 

 

 

最初のショーケースだったHELLOはありがたいことに友人が当ててくれました。

当時はショータイムを見て、ベッキョンが気になるなーと思っていた記憶があります。歌もうまいし、頭の回転が速いし、チャンベクしてる様子もかわいいからね!

周りにも、たぶんわたしはベクペンで落ち着きますね~って言ってたはず。

 

そうやって迎えたはじめての生のEXOのステージ。

席がとても良くて(センステ前のブロックの、通路沿いだったはず)はつらつとしたメンバーたちの姿がよく見えました。目がチカチカするぐらいに、おいおいこっちの顔ぜんぶ白飛びしてるんじゃないの、ってぐらいにステージ上ぜんぶが輝いていて、全員にひとしくキャーキャー歓声をあげてしまった、そのはずが、最終的に「ディオーー!!!!」としか叫んでいなかったのだった。

こうして、推しが決まりました。

 

生のステージを見て好きになったので、やっぱりコンサートに行きたくて。

2014ロスプラでは東京大阪各1回だったのが、2015年リューションは福岡初日、東京ドーム初日、大阪2daysと増えていた。

MAMAにも行こうか最後まで悩んだ末、いきなり音楽祭ってのもなあ…と腰が引けて断念して、(それはいまだにちょっと後悔しています)そのかわりに、と言ったらなんだけど単コン追加公演のアナウンスが出たから行こう! と思い立ち、マニラ2daysのチケットを取りました。

 

ソウルでもなく台湾や香港でもなくいきなりマニラ。今思うとよく取ったなあと思うけれど、大阪の最終日が…まためちゃくちゃ見やすい&カメラ近くの席だったおかげで、事あるごとに曲のキメ部分を浴びまくってしまったのである……。

例えば、すごく良く覚えてるのはウルロンのブリッジの「うーりまるごん はーなどぅるしく〜」ってところを歌いながらディオさん、珍しく指で銃を作ってバーンとやってみせた、その直線上にいたのが〜そう私だ〜!!みたいな事が起こりまくり、僕らの未来に幸あれハッピハッピー❤✌️というテンションで幕を閉じたので、そのロスの勢いもかなりあった気がします。

 

 

年明けて2016年1月。

夏みたいな暑さのマニラはものすごい湿度で冬仕様の体からHPを奪うし、タクシーは言わなきゃメーター回さないし、メーター回しても絶対に遠回りするし、ホテルにも会場横のショッピングモールに入るのにも厳重なガンチェックがあってビビったけど、モールに何でもあって入っちゃえば1日ダラダラしていられるし、ホテルは値段の割にとっても豪華で快適、マニラサイコーイエーイ、となるのに時間はかかりませんでした。

しかも、会場のMOAアリーナはステージと客席が異様に近くて、スタンディングフロアの一番後ろにいてもメンバーの表情までバッチリ見えるほどなのです。

海外コンの例に漏れず集合から長時間待ったのですが、開場直前に大混乱が起きて、上りのエスカレーターを逆走して下りながら我先にと扉になだれ込むことになったりして、まったく意味が分からなくて高揚しました。

アリーナの区域わけもあってないようなもので、みんなライブ中でも適当に行き来しまくっててはちゃめちゃにおかしかった。(今はそんなことないみたい。そのときがちょっと異常だった気がする…)

メンバーのコスプレイヤーたちがペンから大人気で、記念撮影の列ができてたり。

アリーナ区域の中でコピーダンスを踊りまくってる集団がいたり。

いままで感じたことのない空気に、ウワーッ楽しみ方は自由なのだ~~!!と瞳孔が開き、圧倒されたまま初日が終わってしまったのでした。

 

でも要領はつかめた。2日目はセンステ前のブロックだし、番号もよさそうだ! 

 

そして迎えた2日目は、さすがに整列入場だったことと周りの人々との助けあいもあって、なんと最前のすみっこに陣取ることに成功したのです。

柵の向こうのステージが…手を伸ばしたら届きそう……! 本気でZEPPの最前とステージ、いやそれより狭いぐらいの間隔。しかも公演中はスマホ撮影OKで、何なら柵前のセキュリティスタッフにiPhoneを渡すとステージの写真撮ってくれるんです。それどころか、うちわが壊れて途方に暮れていたら、目の前のセキュリティのおじさんがステージのセットを留めているテープを豪快に剥がして補修してくれた。いいのかよ! 突っ込みどころが多すぎるだろ!

 

そんな状態だったのでダンスも、歌う様子も、ウソだろー実体がある!!っという感じで生々しく目の前で繰り広げられました。まさに4・D・X!!!メンバーみんなめっちゃ至近距離にいらっしゃったし、チャニョルなんて私のD.O似顔絵うちわみて噴き出して笑ったりしていた。

のに、だ。

肝心のディオさんが、全然私を見ない。近くに来ても、ぎりぎりで見ない。私の頭上を飛んでいく視線。何てことだ~近すぎるのか~~!!

まあそれはそれで仕方ない、こんな間近で歌う姿が見られるなんて最初で最後かもしれないんだからと気を取りなおすも、それにしてもこんな至近距離でちらりとも目が合わないなんて、私はよほどおぞましい顔で彼を見ているのだろうか、と落ち込む。

左隣にいた日本人のチャニョルペンさんが「見ないわね、見ないわね、気付いてないのかしら、コンタクト入れてないのかしら、頑張って呼びましょ!!」と励まし続けてくれて、ありがたくもあるが次第に重くのしかかるプレッシャー……ええと、わたしは歌を聴きに来たんだよな……?

 

まあそれでも、なんやかんやで終盤までキャーキャー楽しんで、他ではありえないから!とそれなりに撮影もしちゃったりして、それでテンション最高潮のDrop thatのときにそれは起きた。

 

間奏中、センステの真ん中でいったんしゃがみこんだディオさんが、ふとこちらを見た。

そして立ち上がるなりスタスタスタと!一直線に!迷いなく!私のいるあたりに向かって!!歌いながら歩いてきて……! 

白いシャツ姿の、その白い部分ががどんどん大きくなって、ついに目の前に、ZEPPの最前みたいな状態の、ステージの端に足をかけて、互いに手を伸ばせば確実に触れられる距離のその目の前に……

あっ……あ……は…と息をのむわたし。

何もかもがスローモーションみたいになった世界のなか、上からウワッと降るようにかがみこんできた目の前のその人は、まずわたしの右隣のセフンペンさんを指さしながら微笑み。

スッ……と視線を上げると、最低限の動きでわたしをスルーして左隣のチャニョルペンさんを指さし、そのままくるりと踵を返し????dfcvg:¥^:l;。、yfr??

 

 

はぁ~~~~~~????

 

 

突然、大量の石ころをおなかに詰め込まれたみたいな気分になった。

いま、わたし、無視された。推してるアイドルに、かんぜんに無視された。

 

チャニョルペンさんもしばし絶句していたけど、早々に気を取りなおし小さな声で「気付いてるからこそ、だよ……」と言った。

「そうですね」わたしは薄く笑いながら答えた。

「撮ってたからじゃないですか?」と右のセフンペンさんが遠慮がちに言う。「撮られるの、嫌いって聞いたし」

そうか…そうかもしれない。でも会場じゅうほぼ全員撮影してるんですよ…かく言うおふたりもiPhoneを手にして……。でも、そうか……自分のファンには撮ってほしくないのか……ああ申し訳ないことをした。そうだよね。パフォーマンスを見にきたのに、欲に目がくらんだわたしが悪かった。もうやめよう、ディオペンとしての覚悟を見せるためにも、ここでカメラを置きます。

 

ポケットにiPhoneをしまい、その後ほとんど出すことはなかった。

 

 

アンコールのとき、目の前を歩いていく小柄な猫背姿に、ダメもとで手を振った。

その人は、わたしを見てにやりと笑い、小さく片手をあげて手を振りかえしてくれた。

 

 

その夜わたしは悪夢にうなされた。内容は覚えてないけど、朝起きたら同室の同行者に「ずっとギョンス……ギョンス……って言ってたけど…」と言われた。

 

 

帰国して、撮影した動画をPCに取り込んで拡大して見た。そこに映っていたのは。

ディオさんが、しゃがみこんだ姿勢から立ち上げるシーン。うちわを持つわたしの手元を見て、それからiPhoneのレンズをしっかりととらえる丸い瞳。こちらに来る迷いのない足取り。

瞬きひとつせず、ファールボールの行方を追うように飛び越える視線。

そして、カメラを手にしたまま呆然としているであろうわたしに背を向ける直前の、それは満足げに、目を見開いた、微笑み。

 

 

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これがマニラで起きたことのすべてです。

 

 


追記:載せようか悩んだけどどう考えても面白すぎるので、私を無視している瞬間のディオさんの写真を載せます。


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