寝ても覚めても夢の中

個人の妄想と偏見と現場からの記録

9月12日に君を思う

9月12日は、BTSのRMこと、ラップモンスターさんこと、キムナムジュンくんの誕生日です。

 

毎年大騒ぎで画像を貼り付けて、ありったけの言葉をツイートしてお祝いしていたけど、なんだか今年は、いかした祝いの言葉が出てこない。

その代わりに(というのも変だけど)私が大切にしている想い出を書き留めようかな、と思った。

そうやって彼のことを考える日にするのが、今年のお祝いの形なのかもしれないな、と思ったので。

気絶しそうに長い。ほんとはもっと長く書けるぞ。これは、あくまで私主観の文章なので、浸りすぎ〜!となるかもですがご容赦ください。

あと友達には何度も話してて私から聞かされた人も多いと思うけれど、いつものやつが始まったなとと思ってほしい。今でも何年たっても色あせないエピソードです。

 

 

ときは2016年の春にあった、ロッテファンミーティングにさかのぼる。

当時にしても嘘だろ!?ってぐらい色々盛りだくさんな神イベントだったのだが、メンバーが一列に並んだ机のところに行って、紙に全員からサインをもらうというシチュエーションが用意されていた。いわゆる本国ペンサスタイル。ただし一人一人とのコミュニケーションをとってはいけなくて、メンバーに話しかけないでください!! とめちゃくちゃ注意された。

私は、絶対本人に、あなたのファンであるということを伝えたかったので、持っていた赤いリップで腕に“RMサランへ”と書いた。

サインしてもらう時それを見せたら、一瞬ギョッとしたあと「ありがとう!」と顔を上げて目を合わせて笑ってくれたラップモンスターさん。

それだけで本懐を遂げたな……という気分だったが、そのあと集合写真を撮る段に、私の前で椅子の位置調整が入り、メンバー全員が見える位置で待ち時間が発生するというラッキーが起こった。顔を上げてあたりを見回したラップモンスターさんが、ド緊張してカチコチの私に目を留め、大きく笑ってグッと親指を立ててくれた。君はさっきの俺のペンですね、って感じで。来たね! って言われたように感じられて、息が止まった。写真を撮った後(撮った瞬間の記憶はぶっ飛んでいる)席に戻る前の廊下で膝がガクガク笑って座り込んだのを覚えている。短期記憶に残った。インスタント認知。すごい。でき上った写真を見たら、我ながら見たことないガッチガチの顔で映っていた。

 

 

 

2度目の交流があったのは、その年の年末。

リリイベのハイタッチ会でラップモンスターさんと接触の機会を手に入れた私は、意気揚々と列に並んでいた。

首からうちわをぶら下げて。

韓国語はしゃべれないし、そもそも言葉をしゃべれる余裕がある気がしないし、でも、絶対に伝えたい。あなたには価値がある。あなたの存在が救いになっている人間がいると。

悩みに悩んで、なぜかうちわにメッセージを書いて、首からぶら下げた。

私のうちわはかれこれ5年ぐらい同じものを修繕しながら使ってるんだけど、最初は名前だけで作って、例のロッテペンミの時にも持って行ってた。

その時のいい記憶のためか何となく御利益がある気がして常に現場に帯同していたのだけど、その時初めて裏面にメッセージを書き足した。

めちゃくちゃ悩んで、悩んで、「あなたがいてくれて私は幸せです」というようなことを書いた。首からうちわを下げているのが妙に恥ずかしくて、コートを着て列に並びブースに入る直前に脱ぐという戦法を取ったら(変質者じゃないんです……!)という気持ちになってしまって全然落ち着けなかった。

 

いよいよブースの入り口に立ち、勇ましくコートを脱いで、足を踏み出す。

いた……えっ立ってる……背が高い……こっち見たえっ、えっ。

彼は一瞬、私の全身をスキャンするように確認、まずは名札を見つけて「わー!〇〇~!」と名前を呼ぶ。(天才でしょ)そして、名前を呼んでいる間に、目の前の女が首から紐でぶら下げているヤバいうちわを見て、状況を把握したのだろう(いやほんと天才でしょ)かがんで目線を合わせて「ああー僕も幸せです」と……。

 

たぶんこの間、3秒ぐらい。

でも、わたしにはものすごく長い時間のように思えた。滑って転ぶ瞬間みたいだった。

 

剥がされながらアサッテの方向に向かって「これからも頑張って!」とか言ったのは覚えてる。会場を出たぐらいでやっと現実に戻ったというか、じわじわっと何かがこみ上げた。

必死で翻訳したこの一言、間違ってなかった、よかった。というのが最初。

それから、えっこの突然のメッセージを一瞬にして読み取って、日本語で最適な返事をしたの? というのが来た。

 

電車の中で泣いた。泣きながら、明後日のペンミ、席あんまりよくないけどもう十分……! と思った。爪痕を残すつもりが残されたな。よく頑張った私、よく頑張ったうちわ、よく頑張ったラップモンスター。

 

ペンミはBTSを始めてみるという友達と行った。ステサイのほぼ見切れ席の一番端っこ。隣の席が2席空いていたのは、誰かが捨てたのだろうか……。

周りにはラプモンの応援グッズを持っている人はほとんど見受けられず、私はうちわと共に使命感を抱えていた。いつこっちに来ても、俺がいる限り、絶対に寂しい思いをさせない。100人分の応援を送るぞ。

イベントは滞りなく進んでアンコールも終盤。最後の挨拶でメンバーがステージの隅から隅までを回って手を振る。端の端まで来てくれれば、もしかしたらファン(私)の存在に気づいてもらえるかもしれない!

そしてラップモンスターさんがこちらに来る。いつもそうするように上のほうの席にブンブン手を振った後、視線を下ろして……私を見つけた、正確には私のうちわのメッセージを。

彼はあっ!!と言う形に口を開けて、目を見開き、知ってる人(うちわ)に偶然会ったという顔をした。こちらを指さして何回か頷くと、ニッと笑ってしばらくの間、私を見て手を振り続けた。

その反応は明らかに“覚えていた”人のものだった。リリイベのブースに来たファンが来ていると気づいたとしか思えない反応だった。

 

 

それで私はちょっと気がおかしくなって、毎回、コンサート会場に違うメッセージを持っていくようになった。

視認できそうな距離のときはもちろん、めちゃくちゃ遠い席でも、うちわサイズの紙に毎回、蛍光のシートを切り張りして文字を貼った。

新曲最高! とか、今日も超かっこいい! みたいな軽い言葉のこともあれば、歌詞に引っ掛けて熱いメッセージを書いたりもした。

それらが見えていたのか見えてなかったのか。何となく見た!? って喜んだこともあったが、ペンミの時みたいに“通じた”という実感が得られたことはなかった。

バンコクのスタンディングには件のうちわを持って行って隅っこのほうでブンブン振っていたら投げキスしてもらった。やっぱこのうちわご利益あるな、と思ったものだ。

 

いつしかすっかりうちわ芸人となった私だったけど、それはもはやなんていうか、自分の中の儀式みたいだった。このコンサートに私はなにを思って臨むのか。彼らに今何を思っているのかを、書いて、切り出して、貼って、胸に抱いて、確認するような作業だった。

 

 

そんなこんなでWINGSツアーを、海外まで行ってめちゃくちゃに追いかけて、迎えたさいたまスーパーアリーナ

席は後ろのほうだったけどトロッコが通るときにワンチャンあるな、と思ってボードを作った。

そのころラップモンスターさんは、会場が広くなりましたが心はそばにいますから……というようなMCを何度かしていた。ファンからの「バンタンが遠くなっちゃったみたいで」みたいな声が届いていたんだろうな、と思う。

そんなこと気にしなくていいのに。どんどん上へ、目指す方向へ、飛んでいけばいいのに。

「離れた場所にもあなたの曲はちゃんと聞こえてるよ」というようなことを書いた。

TV番組で「世界中の少しでもたくさんの人に自分の音楽を届けたい」と言っていたラップモンスターさんの姿を思い出しながら書いた。珍しく長くなってしまって、四角いボードになった。

 

アンコールが始まるとWINGSの前奏が聞こえて、トロッコが出てくる。隣の友達にいつものうちわを持ってもらって、私はボードを抱えていた。目の前をトロッコが通り過ぎたときラップモンスターさんがこっちを見た気がしたけど、すぐにアリーナのほうに身をひるがえしてしまった。

うーん今回のメッセージ、結構気合い入れて作ったけど失敗か。字数も多かったしな……落胆しそうになった時。

ラップモンスターさんはバッ!! とすごい勢いでこちらに向き直った。

私のボードをもう一度じっと見て、私の顔を見て、それで胸のところに手を当てて破顔一笑。トロッコの動きに逆らうように体をこちらに向けながら「了解した」とでもいうように大きく数回頷いた。

“届いた”と思った。

あー今届いた、すごい、双方向になった。

お互いにものすごい情報密度で、一瞬にしてやりとりした。

なんだこれ、こんなこと起こるのか。

その日はめちゃくちゃ興奮して寝付けなくなって大変だった。

のぼせた頭で、こうやって想いが伝わることってあるんだな~と思ったし、すごく満ち足りた気持ちだった。

RMさんのことなのでもしかしたら、隣の友達が持ってくれていた私のうちわを覚えていたのかもしれないし、普通にたまたま目に入ったメッセージを気に入って反応しただけなのかもしれない。

それは永遠にわからないけどただひとつ、あれは彼自身に拾おうという意思がなかったら拾えないものだということだけは確かだ。

銀河の星のひとつぶの、光のまたたきみたいなメッセージ。次々に流れていくのを見ているのも疲れるだろうに。律儀に、律儀に。

 

 

今思うとあれが私のひとつのゴールだったのかもしれない。あそこで私は満ち足りてしまったのかもしれない。

不思議なもので、その後あんなに公演のたびに思いついていたメッセージはとんと思いつかないし、ボードもさっぱり作らなくなってしまった。

そのかわりずーっと、あの時と同じことを思っている。

 

どんなに遠くにいても、あなたがあなたの意志でステージに立っている限り、その姿も声もちゃんと届いてるよ。

その声が、私にとって心地よいかどうかはその時々で違う。

熱量はどうしても変わるし、手放しで好きだと言えない部分も出てきたりする。

お互いに違う道を歩いているから、当然離れてしまう気持ちもあるけれど。

それでも、あなたの姿はずっと見え続けているよ。

スタジアムの一番後ろの席からでも、画面の向こうからでも、旅先でごはんを食べに入った店の有線越しにも。

ラップモンスターでありRMであるあなたの音楽は、ずっと聞こえているよ。

少なくともそれが、これまでいろんな縁をつないでくれたこと、世界への扉を開いてくれたこと、今日も私の一つの励みになっていることは確かだから。

 

RMさん。やっぱり私は、あなたがいてくれて幸せです。

お誕生日おめでとう。